寺尾啓二の認知症予防対談 バニラファッジ×寺尾啓二 第4回

第1回から第3回の中で様々な介護エピソードをお話して下さった「7人家族の真ん中で。」ブロガー・バニラファッジさん。介護とは奥の深いもので、「介護する側が自分を大切にしてこそ在宅介護を長く続けられる」、「活用できるサービスは十分活用し、一人で抱え込まないのもコツの一つである」ことなどを教えていただきました。サプリメントの研究開発に携わる寺尾さんも健康でいられる年齢である健康寿命を延ばすために様々な研究に取り組まれています。介護に直面しているバニラファッジさんと、健康寿命を延ばすための研究をしている寺尾さんの対談はお互い得るものが大きかったのではないでしょうか。
対談最終回は【介護をしている側より、介護される側の方が大変。だからこそ自分の時間を大切にする】です。どうぞお楽しみください!

介護をしている側より、介護される側の方が大変。だからこそ自分の時間を大切にする

寺尾啓二(以下、寺尾) ブログや本を読むとバニラファッジさんがうまく介護と付き合っているのが分かりますが、介護を続けるコツなどはあるのですか?

バニラファッジ(以下、バニラ) 家族やヘルパーさん、家政婦さんの存在は大きいですね。私は、午前中の四時間を家政婦さんに来ていただいて介護と見守りをお任せし、その四時間を自分の自由時間としています。

寺尾 そうなんですか。その四時間はどのように使うのですか?

バニラ もちろん日によっても変わりますが、パソコンを持ってカフェに行ってブログを書いたり、美容院やお買い物など自分の用事を済ませたりしています。とにかく家の外に出ることを心掛けていますね。家の中にいるとどうしてもお義母さんたちのことや家事のことが気になってしまって休めないので。主人も自分の時間を作ることを後押ししてくれました。

寺尾 さすが、うまい時間の使い方が出来ていますね。自分を大切にするということは自分に余裕を持つことが出来るということですからね。介護サービスと家政婦さんはどのように使い分けていますか?

バニラ 介護サービスは、どうしてもしていただける範囲がルールで決まってしまうのですが、家政婦さんは余裕があるときには介護以外におばあちゃんたちの布団を干してもらったり、庭の草取りなどもしていただけるのでとても助かっています。

寺尾 ブログを読んでいると、お義母さまとおばさまとバニラファッジさんの3人の関係がちょうどよい関係ですね。

バニラ そうですね。これがもし一対一の介護だったら本当に大変だと思います。

寺尾 私も高齢の母と接するのが週に一日だけですから一対一でもうまく接することが出来ますが、それでも自分の仕事でストレスを感じているとどうしてもイライラしてしまうんですよ。幸い、一緒にいる時間以外でリセットして翌週にまた母に優しく接することが出来ますが、これがもしずっと一緒に過ごしていたら自分でもどうなるんだろうと思ってしまいますよね。

バニラ あまり表に出ていませんが、介護の中での老人虐待って実は多いと思います。

寺尾 幼児虐待はニュースになりやすいですけどね。

バニラ そうですよね。虐待をしている意識が無くても、体が不自由な高齢者のお世話をしないことはネグレクトの始まりだと思います。その延長線上に医療や食事の機会を与えない、衣類や暖房の提供をしない、病気の放置などが考えられます。もちろん全て絶対にあってはいけないことだと思います。そのようにならない為にも、家族や周りの人を介護に引きずり込んで協力し合った方が良いと思います。

寺尾 そうですね。引きずり込むという気持ちが大事ですね。とはいえ、家族環境の問題などもあってなかなか引きずり込めずに一対一の状況になってしまう方も多いですよね。

バニラ その状況で辛く感じている方がいるのであれば、施設に入れてあげるのが双方にとって幸せだなと思います。施設に入れることに抵抗を感じている方も多いようですが、そんな背徳感を感じることはないと思いますよ。例えば、ちょっと前まではゼロ歳児の子供を保育園に預けることは良くないという風潮がありましたが、時代が進むと共に今は全くそういう風潮が無いじゃないですか。そのように介護施設に対しても同じように捉えてもらえるようになって欲しいなと思います。

寺尾 私自身も年を取って介護が必要になったら、自分が施設に行くことに抵抗がないです。その時になったら分かりませんが(笑)。しかし、施設への抵抗感の一方で、施設の空き待ちの問題もありますよね。

バニラ そうですね、身寄りのない独居老人が最優先になるみたいですね。なので、家族がいる方がなかなか入れないこともあるようです。

寺尾 「7人家族の真ん中で。」のブログや本の中では、そんな在宅介護の家族の負担を減らすために、デイサービスやショートステイを活用することを勧めていますね。

バニラ 私も今日はショートステイを利用しています。実際はショートステイにすんなり行ってくれるお義母さんとおばさんではないので、その前準備が色々と大変なのですが、そのサービスを利用することによって家族や自分自身の負担も減りますし、出掛けることも出来ます。これからもどんどん利用したいと思っています。あと、よく周りの方から「二人の介護をよくやっているわね。大変ね。」と言われて介護をしている方が大変という話がどうしても注目されますが、私は介護をされる方が大変だと思いますよ。

寺尾 バニラファッジさんは心優しい方なんですね。でも確かにその通りですよね。実際にはなかなかそのように思うことは難しい方も多いかもしれませんが、それでも介護される方はもっと大変だと思わなければいけませんよね。今回バニラファッジさんから介護のお話を色々お伺いすることが出来て感じたことは、何より一日でも長く健康でいること、介護をされない体でいることが一番だなと感じました。

バニラ そうですね。いわゆる「ぴんぴんころり」ですね!

寺尾 私はサプリメントの研究開発に長年携わってきたのですが、平均健康寿命を伸ばしたいという思いがありました。日本の平均寿命はとても長くなっていますが、健康でいられる年齢である平均健康寿命がほとんど伸びていないんですよ。つまりそれだけ介護する人も介護される人も増えているというわけです。ですから、自分が開発に携わったサプリメントがこの高齢化社会に役立ってほしいなと前よりも強く思うようになりました。南極のオキアミからとれる「クリルオイル」などの認知症予防に効果のある栄養素が学会や論文でもどんどん発表されるようになっているので、今まで以上にがんばりたいと思います。

バニラ 本当に健康でいることが大事だと思います。期待しています!

寺尾 バニラファッジさん、今回は色々と在宅介護の現場について教えていただき、ありがとうございました。これからもブログと新しい本の出版を楽しみにしています。

バニラ こちらこそありがとうございました。教えていただいた寺尾さんのブログも楽しみにしています。

バニラファッジさん プロフィール

1963年生まれ。美術短大を卒業後グラフィックデザイナーに。1990年結婚、3年後長女出産を機に退職。その2年後双子の出産を機に夫の実家に転居。姑、姑の妹との同居が始まり7人家族になる。2006年から、嫁vs姑の様子や3人の子育ての様子を綴ったブログ「7人家族の真ん中で。」をスタートし2008年に1000万アクセスを達成。近年は主に姑の介護をテーマに更新し、2013年に1億アクセスを達成。現在も毎日更新中。2009年に立ち上げたお嫁さん応援サイト「お嫁さんな日々」では、お嫁さんのお悩みコーナーやオリジナルグッズの販売も。著書に「7人家族の真ん中で。」「スーパー嫁の汗と笑いの在宅介護」がある。
ブログ「7人家族の真ん中で。」http://carmine-appice.cocolog-nifty.com/blog/
公式HP「お嫁さんな日々」http://vanillafudge.jp/

寺尾啓二 プロフィール

’86年京都大学大学院工学研究科博士課程修了。京都大学工学博士号取得。専門は有機合成化学。ドイツワッカーケミー社ミュンヘン本社、ワッカーケミカルズイーストアジア(株)勤務を経て、’02(株)シクロケム設立、代表取締役に就任。東京農工大学客員教授、日本シクロデキストリン学会理事、日本シクロデキストリン工学副会長などを兼任。’12年から神戸大学医学部客員教授と神戸女子大学健康福祉学部客員教授を兼任。趣味はテニス。