寺尾啓二の認知症予防対談 バニラファッジ×寺尾啓二 第1回

本サイト「認知症にならないための生活の知恵」の監修をしていただいている神戸大学医学部客員教授の寺尾啓二さんに、嫁vs認知症とリュウマチの姑お二人の様子や3人の子育ての様子を綴ったブログ「7人家族の真ん中で。」の作者バニラファッジさんと対談していただきました。ブログを始めた経緯から認知症のお姑さんとの関係、介護の仕方など非常に役に立つお話を楽しくお聞きすることができました。対談は4回に分けて掲載します。
対談第1回目は【子育てブログから時代と共に介護ブログへ】です。どうぞお楽しみください!

子育てブログから時代と共に介護ブログへ

寺尾啓二(以下、寺尾) はじめまして。ブログと本を楽しく読ませて頂いています。本当に楽しいブログですね!最初はどのようなきっかけでブログを始めたのですか?

バニラファッジ(以下、バニラ) いつも読んで頂いてありがとうございます。「7人家族の真ん中で。」というブログは、最初のころは今のような介護について書いたものではなく、子育てブログだったんですよ。しかも、書き始めた当初はこんなに多くの人に見てもらえると思っておらず、最初の頃の読者は私の主人と実家の両親ぐらいでした(笑)。

寺尾 え!そうなんですか!ではここまで読者が増えるきっかけは何かあったのですか?

バニラ 最初の頃は今のように読者が増えるとは思っておらず地道に書いていたのですが、Yahoo!さんの雑誌に「面白いブログを見つけました」と紹介していただいたことをきっかけに、一気に読者の方が増えましたね。

寺尾 そうだったんですね。最初の頃から既に今のようなイラストを入れた内容で描かれていたのですか?

バニラ はい、描いていました。松本ぷりっつさんという漫画家さんが好きでブログも読んでいましたし、特に当時はイラストブログが流行り始めていたので、その影響もありましたね。

寺尾 私も研究者ブログ化学と健康まめ知識というブログを長い期間書いているのですが、読者が身近な人から広がらなくて。私は研究者なので、論文を書くことには慣れているのですが、「ブログは短くてわかりやすい方が読みやすい」というのはわかっていても、どうしても長くて難しいものになってしまいます。

バニラ そうなんですか。今度、読ませて頂きますね。

寺尾 ありがとうございます。何か気になることがありましたら教えてくださいね。ところで話は戻りますが、ブログを読んでいると独特のイラストがとてもいいですね。イラスト自体はいつ頃から描かれているのですか?

バニラ 美術短大出身なので昔から絵を書くのは好きでして、その後も就職先のグラフィックデザインの会社でデザイナーをしていました。

寺尾 そのようなバックグラウンドがあったのですね。ブログのイラストは手描きですか?

バニラ 実は手描きではなく、パソコンのソフトを使ってマウスで描いているんです。それも独特のイラストとして評価して頂いている一因かなと思っています。

寺尾 イラストもとてもいいですが、やはり独特の話の切り口も面白いですよね。

バニラ ありがとうございます。読んでいる方が自由に解釈をして頂くことが大事だと思っているので、語り過ぎないことを心掛けて書いていますね。

寺尾 私がブログを書く上で特に苦手にしているところですね(笑)。ブログを書いていて自分の想定とは違った反応があったことなどはありますか?

バニラ ありますね。基本的に読んだ後に笑える方が良いなと思うので、一話ごとにオチを付けるんです。笑いをとりにいったのに、意外にも「涙が出ました」と言って下さることもあり、驚くこともありますね。

寺尾 そうですよね。私も似たような経験があります。私も先日の自分のブログで、岡山に住んでいる母とのことを書いたのですが、「暖かい気持ちになった」という感想を何人かの方にいただいてびっくりしました。実はブログのネタがなくて、ただ日常を書いただけだったんですがね。

バニラ そういうのって、ありますよね。ちなみにどんなお話だったんですか。

寺尾 母は岡山で一人暮らしをしていて、私は週に1日泊まって一緒に過ごしているんです。その時に、私が家のお風呂ではなくたまには近くの温泉に行こうとしたら、「一緒に行きたい」というんです。びっくりしましたよ。母は私とスーパーに買い物に行く時にも手をつないでいるぐらい足腰が弱っているし、それと年々お風呂も好きではなくなっているのに。

バニラ 男湯と女湯の問題もありますしね。

寺尾 そうなんです。母には温泉で気持ち良くなって欲しいけど、お風呂で何かトラブルが起きないか考えると気になってしまって。結局連れていったのですが、女湯の入り口まで手をつなぎながら、最後まで「本当に連れてきて良かったのかどうか」悩んでいました。

バニラ お気持ちわかります。お母さまの後ろ姿が気になりますよね。自分はお風呂に入らずこのまま入り口で待っていようかなと思いますよね。

寺尾 そうですよね。私は温泉が大好きで普段は露天風呂とサウナをゆっくり入るのが好きなんですが、そのときばかりはさっと入って出て待っていました。そうしたら無事にお風呂から戻ってきて。「とても気持ちよかった。また連れてきてね」と言われて安心しました。この体験から、介護には男女の問題もあるのかな?と思いましたね。

バニラ 私の在宅介護も女性同士だからうまくいっているなと思うことがあります。これが義理の父であったら、介護できることにも限りがあると思います。

寺尾 やはりそうですか。

バニラ ただ、うちの旦那は介護されるなら、若い女性がいいな?などと寝ごとを言ってますけどね(笑)

バニラファッジさん プロフィール

1963年生まれ。美術短大を卒業後グラフィックデザイナーに。1990年結婚、3年後長女出産を機に退職。その2年後双子の出産を機に夫の実家に転居。姑、姑の妹との同居が始まり7人家族になる。2006年から、嫁vs姑の様子や3人の子育ての様子を綴ったブログ「7人家族の真ん中で。」をスタートし2008年に1000万アクセスを達成。近年は主に姑の介護をテーマに更新し、2013年に1億アクセスを達成。現在も毎日更新中。2009年に立ち上げたお嫁さん応援サイト「お嫁さんな日々」では、お嫁さんのお悩みコーナーやオリジナルグッズの販売も。著書に「7人家族の真ん中で。」「スーパー嫁の汗と笑いの在宅介護」がある。
ブログ「7人家族の真ん中で。」http://carmine-appice.cocolog-nifty.com/blog/
公式HP「お嫁さんな日々」http://vanillafudge.jp/

寺尾啓二 プロフィール

’86年京都大学大学院工学研究科博士課程修了。京都大学工学博士号取得。専門は有機合成化学。ドイツワッカーケミー社ミュンヘン本社、ワッカーケミカルズイーストアジア(株)勤務を経て、’02(株)シクロケム設立、代表取締役に就任。東京農工大学客員教授、日本シクロデキストリン学会理事、日本シクロデキストリン工学副会長などを兼任。’12年から神戸大学医学部客員教授と神戸女子大学健康福祉学部客員教授を兼任。趣味はテニス。