寺尾啓二の認知症予防対談 バニラファッジ×寺尾啓二 第2回

「介護は常に限界に挑戦をしているアスリートのようだ!」と言い放つパワフル爽快主婦「7人家族の真ん中で。」でおなじみのブロガー・バニラファッジさん。同じく高齢の親を持つ寺尾啓二さんも近い将来介護を控える身として気になる点、現実と理想の違いを聞くことが出来ました。日常の介護で、介護する側とされる側双方が不快な気持ちにならないような一工夫など、バニラファッジさんならではの介護術は役に立つのではないでしょうか?
対談第2回目は【毎日がトレーニング。私は限界に挑戦する介護アスリート!】です。どうぞお楽しみください。

毎日がトレーニング。私は限界に挑戦するアスリート!

寺尾啓二(以下、寺尾) 介護についての話をお聞かせいただきたいのですが、現在はお義母さまとおばさまを在宅介護されているのですよね。

バニラファッジ(以下、バニラ) はいそうです。お義母さんは身体は丈夫ですが認知症で、おばさんはリウマチがひどく身体が不自由です。

寺尾 おばさまは認知症の症状はないのですか?

バニラ おばさんは、認知症の症状はありませんね。考えることや話すことは驚くほどとてもしっかりしています。お義母さんとおばさんは人生のほとんどを共に過ごしてきた姉妹なのですが症状は全く違いますね。

寺尾 認知症とリウマチの高齢者お二人を介護するのは、とても大変ですね。在宅介護を選ばれた理由はありますか?

バニラ これといった理由はないんですよ。症状は徐々に進行するのですが、急に歩けなくなったりボケたりはしないんです。なので、症状が軽かった当初は「これくらいだったらやってあげられるかな?」と思いながら手伝っていたんですけど、気づいたらやってあげられることが徐々に増えていって。じわじわと鍛えられてきたって感じですね(笑)。

寺尾 その表現は分かりやすいですね。とはいえ最初の頃は色々と大変だったのではないのですか?

バニラ そうですね、最初は入れ歯を触るのにも抵抗があって、とても辛かったですね。最初は自分で入れ歯をはめることは出来たのですが、だんだん洗うことが難しくなってきました。私がやってあげなきゃと思い、洗おうとしたのですが、本人たちには抵抗がある気持ちを見せられないじゃないですか。
そこで私が考えたのが「大事な入れ歯を汚すと悪いから大切に扱うね!」と言ってビニール手袋を使い洗うことにしたんです。「大切に扱う」と言われると嫌な思いはしないし、私自身もビニール手袋をすることによって抵抗感がなくなりました。その後症状が進行し、入れ歯をはめることも出来なくなった時でもはめてあげることが出来るようになりました。

寺尾 なるほど。ちょっとした一工夫がその後の介護生活においてお互い気持ちよくやっていくコツなんですね。

バニラ そうなんですよ。日常生活の延長で、例えばお茶は自分で飲めるけど注ぐことが出来ない、「それくらいなら私がやってあげるよ、だからいつでも呼んでね」みたいな感じで介護生活がスタートしました。先ほども言いましたが、色んな事を頼まれているうちに出来ることが増えていき、徐々にトレーニングして様々な事を身につけていった感じがあります。まるで常に限界に挑戦をしているアスリートのようですね(笑)。

寺尾 それはすごい!とても前向きですね!おひとりで介護するのも大変だと思います。介護サービスはどのようなものを利用されていますか?

バニラ 高齢者は服を脱いだり着たりするのが負担になってくるので、お風呂に入ることがだんだん面倒になる方が多いみたいですね。そうなると、家族も当然本人も気持ちの良いものではないので、まずは入浴介護サービスからお願いしました。

寺尾 うちの母も同じですよ。先ほども少しお話ししましたがお風呂が面倒になってしまって。今は入浴介護サービスをお願いしています。

バニラ 自分はお風呂に入らなくても平気だからいいんだと言うんですが、周りは嫌な思いをしてしまうんです。なので、入浴介護サービスで体をきれいにし続けることは大切だと思います。おばさんは要介護5なので介護サービスを頼めることも多く、週に5回、朝の起床介護1時間をお願いしています。内容は起床、食事、お化粧、歯磨きなどですね。

寺尾 要介護の度合いによって介護サービスをお願いできる範囲は決まっていますが、介護サービスはどのようにして選んでいるのですか?

バニラ 使える金額の範囲を超えてしまうと、こちらの金額の負担が増えてしまうので、サービスを選ぶのは本当に重要です。

寺尾 サービスの範囲が広いと選ぶのも大変ですよね。

バニラ 自分では計算できないのでケアマネジャーさんに来ていただいて、全てのサービスを計算しながら「こういうのはどうですか?こういうのが利用できますよ。」とグループ会議で提案して頂いて助かっています。それをだいたい半年に一回、症状の進み具合で見直しを行っています。

寺尾 ブログでそのようなシーンがありましたね。こういうことだったのですね。

バニラ 「本人や家族の方がどのように考えているのか」、「どういう介護が合っているのか」等を考えて頂いて話し合っています。

寺尾 それは本当に助かりますね。私の母はデイサービスを利用していたのですが、途中から嫌がってしまいました。当時私は「友達がたくさんいるから家にいるよりそっちに行った方が楽しいでしょ」と思っていたのですが、現実には違うみたいですね。

バニラ うちのおばさんも最初はデイサービスに行っていたのですが合いませんでした。塗り絵やブロック遊びをやっていると、自分の手が不自由なのでうまくできなかったりすると全く楽しくないみたいで。デイサービスの方々も利用者を楽しませようと頑張ってくれているのですが、全ての高齢者が喜ぶかは難しいです。幼稚園児よりももっと個性の豊かな方たちばかりですからね(笑)。

寺尾 それと、年を取ってから価値観の違う人たちの輪に入るのも難しいのでしょうね。将来的には在宅介護は出来なくなるかもという不安はありますか?

バニラ もちろんありますね。自分が怪我をしたり病気になったり、あるいは主人が事故にあったりなど何が起こるか分からないじゃないですか。もしそうなって私が限界になったら、お義母さんたちに先に施設に入ってもらうことにはなるだろうと思っています。

寺尾 そうですね。在宅介護を続けるにはバニラファッジさんの健康が大事ですので、お体には気を付けてくださいね。

バニラ ありがとうございます。でもお義母さんは今まで要介護4だったのが要介護3になり、介護レベルが軽くなったという意味でレベルアップしました。なぜか快方に向かっているんですよ91歳にして(笑)。

寺尾 よくなった理由はあるんですか?

バニラ お義母さんの生命力の強さですかね(笑)。今は歯茎でおせんべいをバリバリ食べますし、飴もガリガリ噛んで食べるという驚異的な歯茎の持ち主です(笑)。70歳ぐらいの時は入れ歯で物が全く食べられなくなった時期があったのですが、「もう入れ歯なんて面倒くさい!」って外してしまって、その後から歯茎が鍛えられて今では何でも食べられるようになりました。でも、食べたことは覚えていないのが困りますけどね(笑)。

バニラファッジさん プロフィール

1963年生まれ。美術短大を卒業後グラフィックデザイナーに。1990年結婚、3年後長女出産を機に退職。その2年後双子の出産を機に夫の実家に転居。姑、姑の妹との同居が始まり7人家族になる。2006年から、嫁vs姑の様子や3人の子育ての様子を綴ったブログ「7人家族の真ん中で。」をスタートし2008年に1000万アクセスを達成。近年は主に姑の介護をテーマに更新し、2013年に1億アクセスを達成。現在も毎日更新中。2009年に立ち上げたお嫁さん応援サイト「お嫁さんな日々」では、お嫁さんのお悩みコーナーやオリジナルグッズの販売も。著書に「7人家族の真ん中で。」「スーパー嫁の汗と笑いの在宅介護」がある。
ブログ「7人家族の真ん中で。」http://carmine-appice.cocolog-nifty.com/blog/
公式HP「お嫁さんな日々」http://vanillafudge.jp/

寺尾啓二 プロフィール

’86年京都大学大学院工学研究科博士課程修了。京都大学工学博士号取得。専門は有機合成化学。ドイツワッカーケミー社ミュンヘン本社、ワッカーケミカルズイーストアジア(株)勤務を経て、’02(株)シクロケム設立、代表取締役に就任。東京農工大学客員教授、日本シクロデキストリン学会理事、日本シクロデキストリン工学副会長などを兼任。’12年から神戸大学医学部客員教授と神戸女子大学健康福祉学部客員教授を兼任。趣味はテニス。