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忘却の脳内メカニズムの鍵を発見:群馬大学(2018.10.10)

 群馬大学(大学院医学系研究科神経薬理学分野)の研究グループは、忘却の脳内メカニズムの鍵を発見したと発表しました。脳には神経細胞のつなぎ目のシナプスに記憶を蓄えており、学習するとシナプスで長期増強が起こり、シナプスのつながりが強固になります。その逆に、ものを忘れるときはシナプスで長期抑制が起こり、シナプスのつながりが弱くなります。
 脳の発達が盛んな幼弱期には長期増強と長期抑制が頻繁に起こりますが、成熟脳では長期抑制はあまり起こらなくなります。しかし、大きなストレスが加わったマウスや自閉症スペクトラム障害、認知障害などの病気のモデルマウスでは成熟後も長期抑圧が起こりやすくなっています。
 群馬大学はシナプス可塑性に重要な働きをするタンパク質ドレブリンの研究で世界をリードしています。生まれたばかりの脳のドレブリンは体の他の細胞と同じE型ですが、発達に伴い神経細胞に特有のA型が増えてきて、成熟するとほとんどがA型となります。研究グループではA型ドレブリンを作れない遺伝子組み換えマウスの海馬ではE型ドレブリンが作り続けられるために成熟後も長期抑圧が起こることを明らかにしました。
 この結果から、正常の成熟脳で長期抑制が抑制されているのは、ドレブリンがE型からA型に変わるためであることがわかりました。今回の発見は、成熟に伴う脳機能の変化の理解を深めるだけでなく、病気の脳に見られる記憶・学習障害の病態解明や治療法の開発につながることが期待されています。この成果は細胞神経科学の世界的学術「Frontiers in Cellular Neuroscience」に掲載されました。